終わらない鎮魂歌を歌おう―魑魅魍魎の跳梁跋扈せし時代にて―

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  scene8.アキとハルカ  



その頃鉄輝は、町中を一心に駆けていた。


(あのねーちゃんたちは大丈夫だって言ってた。けど、何もしないで待ってるだけなんて、嫌だ。)

自分にもできることはないかと考えを巡らせた鉄輝は、一つの可能性に行き着いていた。
そうして家を飛び出したのだ。

目指す先は、アキのもと。
彼女に預けていた物を、鉄輝は求めていた。


「アキ!アキいるか!?」
「あ、鉄輝!ちょうどいいところに……約束のやつできてるよ!ほら!」

ぶんぶんと振り回すアキの手には、傘。
以前響との試合で壊してしまったものを、直してくれるよう依頼しておいたのだ。

「おー、ありがと!すっげ、きれーに直ってる……」
「アキちゃんは手先だけは器用なのよねぇ。」

これみよがしに溜め息を吐いたのは、アキの妹ハルカ。
この姉妹はヒエラルキーにすると彼女の方が高い位置にいることで有名なのだが、今は気にしないでおく。

「ホントに器用だよな、アキは。音屋じゃなくて修理屋やればいいのに。」
「音屋じゃなくて心響屋!ったく、いい加減覚えなさい。そして修理はただの特技なの!」
「特技というか物壊しまくるうちに自然と身に着いただけでしょ。この前だって……」
「あー!それ言わないで!」

目の前で繰り広げられる姉妹漫才から視線を傘に移して、鉄輝はいつか聞いた言葉を頭の中で反芻する。


『その右手の剣でもって、世にはびこる不条理を打ち払え。』


頭から消えない一つの神託が、鉄輝が見出した可能性だった。
もしも、サチが倒れたのが『不条理』ならば、と鉄輝は考えたのである。

「……打ち払える……かなぁ……」
「ん?何か言った?」
「ううん、なんでもねえ。ありがとアキ!あんま物壊すなよ!」
「余計なお世話だ!」


そうして、少年は再び駆ける。


自分を待っているかもしれない、幼馴染みのもとへ。




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