終わらない鎮魂歌を歌おう―魑魅魍魎の跳梁跋扈せし時代にて―
scene5.二人組
一方、件の死神屋はというと、早智の家からはそう遠くない茶屋にいた。
「……ところで横浜くん」
「なんですかな次本くん。」
「最近ここらではおかしな病が流行っているらしいですよ。」
「ああ、なんでも、突然倒れたと思ったらそのまま何をしても起きないとかいう不思議な病だそうですね。」
「ええ、幸いにもまだ死者は出ていないようですが、病人は栄養をとることもできない状態らしいので、いずれは……」
「なんとも恐ろしいですね。」
「一部では、もののけの仕業ではないかとも言われているようです。」
「もののけですか、不思議なことです。」
「更に不思議なことに、この病はわりと幼い女子しかかからないようで。」
「それはまた不可解な。」
「まったく、心配ですね。」
「そうですね。というか君もたまにはまともな話題を出すんですね。説明乙。」
「ははっ、お前ちょっと表出ろ。」
「……だとさ。」
「なるほど。ここに来たのは正解だったみたいね。」
少し離れた所で聞き耳をたてていた二人は、飲みかけだった茶を一息で飲み干し、立ち上がった。
「さーって、お仕事お仕事っ!とりあえず聞き込みでも始めましょうか。」
「はいよー。んじゃ二手に分かれるか。」
「そうねぇ、じゃあこっち行くからあんたそっちね。一通り周ったらまたここで。それじゃそっち頼んだわよ!」
耕太にひらひらと手を振り、やよいは歩きだす。
そうして角を曲がった所で、
「うわっ」
「ぶはっ」
勢いよく誰かにぶつかった。
「いた……何なのよ今日はもう……」
「ねーちゃん!」
ぶつかってきた相手、驚いた顔の少年は、見覚えがあった。
「あれ、あんたさっきの……」
「ねーちゃん、死神屋かっ!?」
「え……」
「死神屋なんだろ!?お願いがあるんだ!サチを……サチを助けてくれ!」
「サチ?」
「早くっ!」
急いで立ち上がった鉄輝は、間髪入れずにやよいの手を掴んで走り出した。
「ちょ、待っ……こーたー!あんたもちょっと来なさーい!」
鉄輝に引っ張られるままやってきた二人に、甘崎夫妻は目を丸くした。
「……鉄輝、そちらの方たちは?」
「死神屋!」
鉄輝の言葉に、夫婦は信じられないという目で二人を見つめていたが、鉄輝は構わずやよいたちに向き直った。
「……あそこに寝てるの、俺の幼馴染みなんだ。ずっと起きなくて、なんか憑いてるって魔女が言ってて、早くしないと、死んじゃうんだ……」
だからお願いします、そう言って頭を下げる鉄輝の横を静かにやよいが通り過ぎた。
「おっけー、まかせときんしゃい。」
自信に溢れたその言葉に、鉄輝は勢いよく顔を上げる。
「大丈夫、あいつあれでもベテランなんだぞ?」
後ろからクシャクシャと鉄輝の頭を撫でて、耕太もやよいの後を追った。
布団の傍に座り、早智をジッと見つめるやよいの目は険しい。
「さっきの話の、か?」
「……だとしたら、ヤバいかもね。私、ちょっと行ってみるわ。」
その言葉を残してふらりと倒れこんだやよいを、耕太が馴れたように支える。
何でもないような顔をしている耕太、そして突然意識を失ったやよいに、驚いたのは夫婦と鉄輝だった。
「うわっ、ねーちゃん!?」
「え、そちらの方……大丈夫ですか?」
「あ、はい。これがうちのやり方なんで。魂だけとばして会話してくるんスよ。」
疑問符を浮かべる三人に苦笑しながら、まぁ見ててください、とだけ告げて耕太は抜け殻となった上司の体をそっと寝かせた。
(頼むぜー、先パイ。)
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