終わらない鎮魂歌を歌おう―魑魅魍魎の跳梁跋扈せし時代にて―
scene1.鉄輝と旅人
少年――鉄輝は急いでいた。
大事な幼馴染みの家に向かうために。
(今日は……今日こそは……)
『今日こそ、サチの笑顔が見れますように。』
ただそれだけを思いながら、少年は走っていた。
だから――
「わぶっ」
「うわっ」
その角を曲がった所に人がいるなんて、考えもしなかったのだ。
「いた……」
女性の声に、慌てて鉄輝は謝ろうと顔を上げる。と、尻餅をついた鉄輝の前に大きな手が差し出され、え、と鉄輝は声を漏らした。
差し出されたのは、青年の手だった。そこでようやく鉄輝は側に居る男に気付いた。
「チビ大丈夫か?あとやよい……は大丈夫だな。」
「ちょっとは心配しなさいよ。」
やよいと呼ばれた女性は青年を軽く睨みながら、それでも鉄輝を立ち上がらせた後に差し出されたその手を掴んで立ち上がった。
「ありがとにーちゃん、そんでごめんなさいねーちゃん!俺急いでてっ!」
「んー、こっちは大丈夫。あんたこそ平気?急ぎすぎてまたぶつからないようにね。」
黒い着物をはたきながら、さほど気にしていないようにやよいは笑った。
「うんっ、それじゃ!」
手を振る二人に背を向けて、鉄輝は再び走った。
(さっきの二人、見ない顔だけど……旅人かなんかか?)
浮かんだ小さな疑問は、幼馴染みの家が見えてきたことによって、忘れられてしまった。
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