始まり


「今日は練習試合があるとぜー。」
「唐突っすね、一体どことっすか?」
「確か、西浦高校。」
「「西浦?」」


「みんなっ、集合!」
「はーい!」
「なんすかー?」
「突然だけどね、今日は練習試合するよ!」
「え!?」
「マジすかー」
「どことどことー!?」
「えっとねぇ、十二支高校!!」





おおきくFULLSWING!!





カルチャーショック


「あっ、十二支の人たち来たよ!」
「ちわーっす」
「ちわー」
.
.
.
「・・・なぁ泉、十二支の人たちって・・・」
「ああ・・・栄口も思うか?」
「うん、なんていうか・・・」
「個性的、だよな・・・」
「あの人、大根大量に持ってるよ・・・」
「あのバンダナ、何・・・」
「フェイスペイントすげー・・・」
「あのモミアゲなんであんな鋭いんだよ・・・人殺せるよ・・・」



捕手VS捕手

「うちの犬飼君は四大秘球というのを会得してましてね。彼以上の投手はなかなかいないでしょう。」
「んだと、うちの三橋だってな、完璧なコントロールで俺の指示したとこに狂いなく投げてくんだぞ。つかコントロールであいつの右に出る奴ぁいねーよ。」
「いやいやうちの犬飼君なんて・・・」
「いやいやオレの三橋の方が・・・」
「ちょ、あああ阿部くん!は、恥ずかしい、よっ!」
「てか阿部のじゃねぇだろゲンミツに!!」
「辰・・・とりあえずお前もヤメロ・・・」



見ちゃった

投球練習・犬飼&辰羅川組
「犬飼君、まずは飛竜からいってみましょう。」
「おぅ」
飛竜に続き、蛟竜、天竜、あとなんか一個忘れたけどたぶんなんとか竜――と投げていく犬飼。
「今日はなかなか調子がいいですね。」
「・・・まぁな。」
少しだけ機嫌が良さそうな犬飼に、辰羅川は笑みをこぼす。
そんな彼らの一部始終を、見てしまった人間がいた。
.
.
.
「・・・あべ、くん・・・」
「お、何処行ってたんだ三橋。さっさと投球練習すんぞ!」
「あの、オレ・・・」
「ん?」
「オレ・・・無個性ダメピッチャーでごめんなさい・・・」
「はぁ!?」



普通の人の、特別な武器

(彼らのアップを見た時、オレは怯えた。)

『むっ、無理だよ!だだだってあの人たち、すごい、んだ、よ。魔球、とか、ストレート、も、すごく・・・速、い・・・』
勝てない、と俯いたオレに、阿部くんは言ってくれた。
『・・・確かにお前は、豪速球なんて無理だし、魔球だって持ってない。けど、お前にだってちゃんと、お前だけの武器がある。』

(阿部くんが、言ってくれた・・・オレの、武器!)

『“まっすぐ”と、九分割の、コントロール。』

(これでオレ達は、相手を、翻弄・・・するっ)
.
.
.
三回目の空振りで、ボクは自分の打席が終わったことを告げられた。
「くっそー・・・」
何でだろう。何で打てないんだろう。
犬飼君や鹿目先輩みたいな魔球でもないのに・・・
「なんで、打てないんだよ・・・っ!」
悔しい悔しい悔しい!!



田島神光臨

回って回って打席二巡目。

「・・・!」
「如何です?『飛竜』は。」
「ふはー、やっぱちょっと止まって見えたな!」
「ええ、それがウリですからね。」
興奮する田島に答えながら、辰羅川は『もう一度飛竜で』とサインを出す。
ファーストに巣山(四球)、セカンドに栄口(世界的バント)。ここでこの四番を抑えなければ、点が入ってしまう可能性は高い。それを食い止める為の判断だった。
それに頷いて、犬飼はボールを握る。
しかし。
「・・・すげぇけど、」
「?」
バットを握り直した田島が、ぼそりと呟いた。
「打てない球じゃない。」
「なっ・・・」
犬飼は既にモーションに入っていた。ハッとして辰羅川は集中し直す。
頭の中で田島の言葉を否定する。打てるはずがない、と。
だが、そんな思いとは裏腹に、背中を嫌な汗が伝う。

ボールが犬飼の手を離れる。
田島がバットを振る。

その一連の流れが、辰羅川にはいやにゆっくりと感じられた。
バットが、ボールが――
.
.
.
辰羅川に通常の時間の流れが戻ったのは、バットにぶつかった白球が、飛び付こうとした子津のグローブの横を通り抜けていった時だった。



先取点を入れたのは、西浦だった。




憧れの魔球

阿「あいつら、球種に名前付けてんぞ。」
栄「マジで〜?」
三「でも、ちょっとだけ、カッコいい・・・かも・・・」
阿「・・・オレらもつけてみる?」
三「え・・・ええっ!?」
阿「例えば・・・『まっすぐ』はアベミ「ここ健全サイトぉぉぉ!!」
三「は 花井くん!!」
阿「お前・・・三橋が驚いてんだろうが。」
花「俺の方が驚いたよ!!」




気付く

(あ・・・れ・・・?)

(もしかしてもしかしてもしかして)

「おかえり猪里〜。しっかし、俺も含めて、なかなか打てねーNa、あの投手の球。そんな速いわけでもねーのNi。」
「・・・虎鉄。」
「N?」
「あの投手・・・ストライクゾーン、四分割やなか?」
「・・・え?」
猪里に言われて虎鉄はジッと投手を見るが、やはりここからでは投球の軌道は見えない。自分の前回の打席を思い出してもみるが、球種しか見ていなかったのでわからなかった。
「Nー、荒れてるだけじゃねーNo?」
「・・・いや、ぶれよるんとは違う。あれは、狙っとるばい。」

(下手したら九分割・・・?・・・いや、それはいくらなんでも無理っちゃね。まぁ何にせよ、対角線上で投げられたらそら手が出んばい・・・ばってん、あれがぶれよるせいやなくて狙っとうもんやと分かれば・・・いけるかもしれん!)

「・・・なんかわかったのKa?」
「まぁ、な。」
不思議そうな顔をする虎鉄に不敵に笑い、キ、と投手を睨む。


「・・・さーって、どげん攻略したろうかいなね。」




クソレフト

「ふぐっ、ごっ、ごめっ・・・」
「あー、泣くなって三橋。明らかお前のせいじゃないから。確実にお前は悪くないよ。」
「あの・・・ホントすみませんでした・・・オレがフライ落としたせいで・・・」
「・・・・・・・・・いや、クソレも悪くねー。確かにクソレだけど、でもお前がクソレな時点で気付くべきだったんだ。結局はオレが一番悪い。打たせてアウト捕ろうなんて考え、クソレがいる時点で持っちゃいけなかったんだ。ごめんな三橋。」
「ちがっ・・・阿部くんは、悪く、ないっ・・・」
「そうだよ、つか結局オレのせいって言いたいんだろ阿部!そうだよオレのせいで点入れられましたホントごめんなさいっ!フライ落としてごめんなさい!!」
「ぐすっ・・・ホント反省してよね水谷君。」
「すみま・・・え?三橋?」
「阿部くんは優しいから表立って水谷君のせいにしてないけど、ホント次の回からは気をつけてよ。」
「はい・・・あの・・・ホントにお前三橋?」
「何当たり前のこと聞いてんの?そんなだからクソレフトって呼ばれるんだよ。・・・阿部くんっ!オレ・・・次、頑張る、ねっ!」
「おう、二人で完璧に押さえてやろうな。」
「う、うんっ!」
「えええ!?さっきの三橋何!?つか阿部もスルー!?何なの!?オレがおかしいの!?うわぁん助けて世界の栄口ぃぃーー!!!」
.
.
「あ、あれでよかった、の?水谷くん、泣いて・・・」
「おぅ、完璧だったぞ三橋。よく噛まずに言えたな。」
「う、うひっ。よかっ、た!」
「これでクソレもしばらくはミスしないだろ。」
「う、うんっ!すごいね、阿部くんっ!」
「お前ら・・・鬼だろ・・・」



その頃の世界

「うわぁん栄口ぃぃ!!」
「えっ、な、何!?」
「三橋が、三橋が豹変したぁぁ!!阿部もスルー!オレおかしくなっちゃったのかな!?それともあの二人が変なの!?」
「(あー、さっき二人が内緒話してたのはこれだったのか・・・)・・・うーん、まぁそんなに気にしすぎないで、次頑張ればいいんじゃない?ほら、もうすぐ打順も周ってくるしさ。挽回しよーぜっ!」
「うぅ・・・野球部に栄口がいてくれてよかった・・・」
「ははっ、そんな大袈裟な。」
「・・・栄口ぃ・・・オレ・・・」
「ん?何?」
「栄口の弟になってもいいかなぁ・・・」
「は?」




後編に続く

2008.5.3