バッテリーの仲

「三橋!」
「はっ、はいぃ!」
「オレの胸に飛び込んでこい!!」
「う・・・え!?」
当然ですが、三橋はオロオロとしています。
「え、でも・・・」
「・・・そうだよな、やっぱ困るよな。三橋、これは野球には関係ないから首振ってもいいんだぞ。」
ちょっとだけ落ち込んだ風を装って言ってみると、三橋は見事なまでに引っ掛かりました。
「う、ううん!お、オレ、首 振らない!オレっ、飛び込むよ!」
そう叫んで、三橋は阿部の胸に飛び込みました。
飛び込んだというよりはタックルしたと言った方が正しい気がしますが、今は気にしないことにします。
「ありがとな、三橋。」
「う、へ。」
阿部は三橋をよしよしとしながら、どうだ参ったか、という目で猿野を見ます。
猿野はうぐっと唸りましたが、子津の方に向き直り、大きく腕を広げました。
「よし子津っちゅー!!俺の胸に飛びこ」
「嫌っす。」
即答でした。



続・バッテリーの仲

阿「三橋、オレのこと好き?」
三「う、うんっ!阿部くん、好きだっ!(信頼的な意味で)」
阿「オレも三橋が好きだよ。(性的な意味で)」
花「だからここ健全サイトぉぉぉ!!!」
阿「んだよ、原作でもあっただろこれ。」
花「お前の()の中身がヤバいんだよ!」
阿「言葉にはしてないからセーフだろ。」
花「文字にしてるからアウトだよ!!もう嫌だオレ!ツッコミもキャプテンも!」



ひとつの結末

兎丸の駿足と猪里の神業的バンドにより一点を入れられ、2−1の十二支リードで、八回裏、西浦の攻撃に移る。
打順は四番・田島から。
一打者目田島は二球目天竜に当て一塁へ。
二打者目花井はバントで田島を二塁へ送るが自身はアウト。
三打者目沖はあえなく三振となった。

ツーアウトランナー二塁。

打者は、7番、左翼手、水谷文貴。
「っしゃーす!!」
打席に立ち、水谷は必死に考え抜いた『作戦』を意識しながら、風にそよぐ横髪を耳にかけた。

(ホントに一瞬で、しかも一か八かの大きな賭け。)
(けど、これまででわかったこと。この打者は、この動かないように見えるボールが、たぶん一番得意。)
(・・・だったら、)

一球目は、投げた瞬間に目を閉じて、ミットに収まる音で、届くまでのタイミングを計る。

(オレはそんなに警戒されてないから、できるだけ楽に押さえようと思ってるんじゃないかな。)
(なら、三球ともあれの可能性は高い。)

二球目は目を開け、先程のタイミングを思い出し、確かめて。

(“トッ、ト”・・・よし、やってやる!)


三球目は――

(・・・ここっ!!)



この打席で、初めて振り下ろされたバット。
誰もが息を飲んで、その打者が作り出す一つの結末を見守った。


「っな、」
「・・・っ・・・」
「あ・・・」
「みずたに・・・っ!」




「・・・せぇーのぉっ!」


「「「ナーイバッチィィー!!!」」」



跳ね返された白球は遠く低めに、その打者の普段のバッティングからは考えられないほど――




「田島!ノースライ!」
「・・・どうってーん!!」



二塁にいた田島が、ホームに帰ってこられるくらいに、飛んだ。



ここでネタばらし

「ナイバッチ、水谷。」
「水谷くん、かっこ、よかった!」
「ありがと・・・二人とも、もう怒ってないの?」
「ふ?」
「ああ、あれか。ほら三橋、さっきの作戦のことだよ。」
「・・・・・・あ!あれ、違う、違うんだ、水谷くん!」
「へ?」
「ありゃあ嘘だよ。」
「えぇっ!?」
「あの、ね、二人で、打ち合わせ したんだ。」
「甘やかすとためにならないからな。」
「なぁんだ・・・よかったぁ、オレ本気で怖かったんだよ三橋がぁ・・・」
「ごっ、ごめん!」
「あー、いいっていいって。気にすんなよ。」
「それオレが言うべき台詞だよね阿部?でもいいよ、ってか二人のおかげでより気合い入ったことは確かだし、ありがと!」
「次の回も、頑張ろう、ねっ!」
「おー!」


「というわけだったよ栄口!」
「あ、ばらしてくれたんだ、よかったね水谷!」
「うん・・・って、え?栄口、もしかして・・・」
「ごめんね、知ってたんだけど、黙ってたんだ。」
「え、何でー!?」
「だって折角三橋が頑張って台詞覚えたのに、あっさりばらしたら可哀相じゃん。」
「オレが可哀相とは思わなかったのー!?」
「・・・えへ。」



明美推参

結局2−2のまま終了。

「あっ、あべくっ、ごめ・・・なさ・・・」
「あー、全然平気だから、そんな泣くなって。お前のせいじゃないよ。つか負けたわけじゃねーし。」
「でっ、でもっ、勝てなかっ・・・」
「・・・みは」
「いや〜ん!泣いてる三橋きゅんかーわいい〜っっ!!」

「「!!?」」

「なっ、おおおおおまっ、確か猿野!何で女装!?てか何で西浦ベンチに!?」
「ノンノンノン、あたしは明美よっ!あぁー、ホント三橋きゅんかわいい〜!!プルプルしてるとこなんてまんま小動物!!」
「震えてんのはお前のせいだろ!」
「あぁ〜ん、食べちゃいたいわ〜、つか食べちゃうぞっ☆」
「ひっ!たたた食べられちゃ・・・!?」
「もうお持ち帰りしちゃうっ☆いざゆかん二人だけのユートピアァァァ!!!」
「ひぃぃあべくっ、あべくんっ!!たっ、たすけてえええ!!」
「ミハシィィーー!!!」



誤解される言い方はプロ級

「いやー、阿部君はホント良い捕手っすよ。うちに欲しいくらいっす。」
「なんだとねずっちゅー!俺以上にスワローを上手く捕れる奴なんかいねぇっての!」
「どうっすかねー、阿部君ほどの捕手なら捕れるかもしんないっすよ?」
それは何処からどう見ても、ただの戯れ、本気であるはずがない。
だが、それが通じない奴がいた。

(『阿部くんがうちに欲しい』→阿部くんが十二支に行く→もうオレの球を捕ってくれない→オレはダメピーになる・・・)

「そ、そんなの、いや、だっ!」
突然叫んだ三橋に、そこにいた全員が振り向く。
「三橋?」
「そ、れに、オレ、オレっ・・・」

『阿部くんには、オレが投げる』

(決めた んだ。)
「あ、あべくん、は、オレの、だっ!!」

「「「!!!???」」」
一気にざわつく西浦・十二支メンバー。
中でも一番動揺したのは、もちろん奴だった。
「み、はし・・・」

三橋の脳内:「阿部くんは、オレの捕手だっ!!」
阿部の解釈:「阿部くんは、オレのものだっ!!」

「オレ・・・もう死んでもいい・・・」
「阿部!しっかりしろ!阿部ぇぇぇぇ!!」

さようなら阿部。ありがとう阿部。阿部、フォーエバー。
.
.
.
その後、三橋の誤解はちゃんと解けたが、阿部の思い込みは解けなかったという。



訪れるさよなら

「それじゃ、俺らはそろそろ帰ろうかいなね。」
猪里さんの言葉に、十二支の人たちは鞄を持った。
そんな彼らを見て、オレは思わず、あの、と声をかけていた。
「・・・帰るって、何処に?」
ふいに出た言葉。ずっと気になっていたこと。
埼玉県立って言ってたけど、十二支高校なんて聞いたことない。
聞いたこと、ないんだ。

「・・・ああ!」
猿野くんはニカっと笑って、言った。
「俺らの世界だよ!」
「猿野くんたちの、せかい?」
首を傾げたオレに、兎丸くんが言った。
「僕らは、もうこっちの世界にはいられないんだ。」
「終わったんすよ。僕らは。」
子津くんも寂しそうに笑う。


風が吹いて、土埃が上がった。
それを受けて子津くんが目を擦ったけど、風が吹く前からその瞳に涙がうっすらと浮かんでいたことには、オレは気付かない方がよかったんだろうなと何となく思った。




そして僕らは永遠の中へ

「終わった?・・・夏はまだ始まったばかりだよ?」
「違うんすよ、僕らは・・・。」
「終わっちゃったんだ。」
僕の言葉を引き継いだ兎丸くんが、ギュッと司馬くんの服を握った。
「だから、帰らないといけないんだよ。」
「・・・十二支さんたちの世界、って、どんなとこなの?」
好奇心に負けた、といった感じで水谷君が訊いてきた。
「うーん・・・」
「永遠と一瞬がごちゃまぜになってるとこかな。」
「つまりアレだ!」
僕と兎丸くんの間に割り込んできた猿野くんが、眩しいくらいの笑顔で、言った。
「終わらない夏があるとこだよ!」
その言葉に、十二支のみんな(そして僕も)はハッと顔を上げて、そうだな、と笑った。
さっきまでの湿っぽい空気が嘘みたいで、西浦の人たち(水谷君以外)もホッとしているみたい。
「オレ、ゲンミツに忘れねーかんな!!」
そう言ってくれたのは田島くん。
「俺らも忘れねーよ!」
猿野くんも嬉しそうに言って、ついでに握手していた。


「そんじゃ、帰るka!」
「はいっす!」
鞄を持って、西浦の人たちに手を振って――そして僕らは歩き出す。




さぁ、帰ろうか。
僕らの世界へ。
止まってしまった、日常へ。
























あとがき




個人的には三年生ズも出したかったのですが、そしたらあまりにも十二支が強くなるため、引退したということにしてます。
蛇神について西浦にいっぱいつっこませたかった・・・
最後に、帰る世界というのは、7Bや華武のいる世界です。十二支のいる埼玉と西浦の埼玉はパラレルワールドみたいなもので、西浦はそれを知りませんが十二支はそれがわかっています。
止まってしまった日常は・・・打ち切りになってしまったことですね。
バリハケンが始まって、ようやく「あー、ホントに終わっちゃったんだなぁ」と思えました。
ありがと。
ミスフルもおお振りも好きー。            





2008.5.3