『待ってるから。』
「誕生日おめでとう。」
突然、後ろから声をかけられた。
振り向くと、クラスメートの女子。
名前は・・・まだ覚えてない。
「ありがとう・・・?」
唐突に、しかも大して親しくもない(というか、つい4日前に入学式があったばかりだ)女子に自分の誕生日を祝われて、嬉しいと言う反面、猪里は少し困惑しながら言った。
そんな猪里の思いを読み取ったのか、彼女はくすりと笑って
「ほら、一昨日の自己紹介の時に言ってたじゃない。4月12日が誕生日だって。もうすぐだなと思って覚えてたのよ。」
なるほど、と猪里は頷いて、今度は素直な気持ちで
「そっか、ありがとっ!」
と笑った。
すると、
「お前今日誕生日?」
またしても唐突に声がかけられた。
「う、うん。」
「へぇ〜早いなぁ、おめでと。」
「ありがと。君はいつなん?」
「俺?12月2日。」
「そうなんか、覚えとかなね〜。」
「・・・それって博多弁?」
「そうっちゃよ。あ、俺は猪里猛臣って言うばい、お前は?」
「俺は・・・」
そこで目が覚めた。
外は、まだ暗い。
ぼんやりとした頭で時計を確認すると、
「うげっ、まだ2時ばい・・・」
電気をつけるわけにもいかず、猪里は再びそっと、布団をかけなおした。
(・・・にしても、懐かしい夢見たっちゃ。)
一年前の今日、二人は出会った。
『俺は、虎鉄大河。よろしくNa☆』
その時のことを、猪里はよく覚えている。
(無駄に軽そうな感じやったと。)
当時のことを思い出して、猪里は小さく笑った。
(あれから、もう一年も経つばい・・・)
ふと枕元の携帯に目をやると、新着メールを知らせるアクセスサインが点灯している。
クラスメートからのお祝いメールだろうか。
見ようかどうしようかほんの少しだけ考えて、
「・・・後で虎鉄が起きたら見よ。」
と携帯に手を伸ばすことなく布団にもぐりこんだ。
(どうせ、虎鉄からのメールは来てないし。)
――何故わかるかって?
――だって、隣で寝てるんだから。
(メールの代わりに、朝一番に言ってもらうばい。)
『Happy Birthday,猪里』
あとがき
これ、わかりにくいですが、「虎鉄に一番最初に祝ってほしいから、お祝いメールはまだ見ないよ」ってことです。
過去は捏造!
虎鉄が隣で寝ている理由は『before that day』を参照にしていただければと思います。