『before that day』




ピンポーン
「はいはーい、どなたですかー?」
現在午後十時過ぎ。

全くこんな時間にやって来るなんて一体何処の人たいしかもどれだけ常識知らずなやつっちゃなどと心の中で毒づきながら、猪里はがちゃりとドアを開けた。

(こんな時間に訪ねてくるやつは一体・・・)
「どちらさまで・・・」
「Yo!猪里!」
(こんのアホ虎かぃ・・・)

「・・・なんしにきたん?」
「うわっ、いきなりそれかYo!」
「当たり前やろ、こんな夜遅くに・・・」
「Eーじゃん、そんなこと気にするなっTe☆」
「ばり迷惑ばい。」
「うわっ!ひでえ!」




ああ神様仏様蛇神様、
夜遅くに人んち乗り込んできてこっちが正論で文句言えば「うわー傷つくNaー」などとほざいているこいつをどうにかしてください。



なんて祈ってみるも当然何も起こるわけないし虎鉄は虎鉄で既に部屋ん中にあがっちゃってるしで、
「はぁ・・・」
溜息一つついて、猪里は全てを諦めることにした。


「ご近所に迷惑やけん、静かにしとりー。」
「はーい☆」














ことりと入れたばかりのお茶を置いて、猪里は再び虎鉄に訊いてみた。
「で、何しに来たと?」
「N―?誕生日祝いに。」
猫舌なのか何度も息を吹きかけてお茶を冷まそうとしながら、虎鉄はさらりと答えた。
「誕生日って・・・俺ん誕生日は明日とぜ?」
「わーってるYo。だから、明日になるのと同時に祝おうと思ってSa。」
「・・・はい?」
「だから、明日になるのと同時に・・・」
「いやいや、何?それはつまり、泊まる気と?」
言いながらふと、虎鉄の横にある荷物に気付いた猪里は――見なかったことにした。
しかしながら、嫌な予感というものはなかなか的中率が高いわけで――
「YEAH!!」
グッと親指を立てて爽やかに言い放った虎鉄に、猪里は呆れるのを通りこして何も言えずに、机の上に突っ伏した。












「さてと・・・12時まで時間あるから、ちょっとだけ寝るNa♪」
「はぁ!?」
「いやほら、最近少しずつ練習きつくなってるだRo?疲れててSaー。」
「ったく・・・勝手に押しかけて、勝手に泊まる気満々で、・・・ってしかも勝手に布団しいてるし!!」
「気にするなっTe☆」
「何様デスカ?」
「そーいや、歯磨いてねーNa・・・ま、いっか。あ、一応猪里の分少し空けとくからNa〜」
「それ俺の布団。そして聞け。人の話を。」
「じゃ、おやすみ〜。」
「・・・殺してよかと?」


そんな風に言ってみるも、虎鉄は既におやすみモード。
(寝つき良すぎたい・・・)
とはいえ、部活がきついのも事実であるし、起こすことなんてできなかった。

「本気でなんしにきよったと・・・」
呆れた口調ではあるが、口元には笑みが浮かんでいた。
「ったく・・・そんなに爆睡しとったら、起こすに起こされんったい。アホ虎ぁー。」
それでも、自分の誕生日を祝うためにわざわざきてくれたことが、すごく、嬉しかった。





(・・・俺も寝よ。)

暑かったり寒かったりするこの時期。
風邪を引かないように、肩まで布団をかけて、自分も隣にもぐりこんだ。











あとがき
・・・とまぁこんな感じで「待ってるから。」に続きます。
結局虎鉄は12時には起きられず(起こされず)、六時ぐらいに目が覚めて、ショックを受ける・・・みたいなかんじで。
「猪誕祭」様に捧げさせていただきました。