♯26


“with 郡山”

「ねぇ、郡山さん。」
「はいはい?」
「もし、譲渡ができるなら、郡山さんは私に勇気をくれますか?」
「へ?」
「勇気、くれますか?」
「・・・あげん。」
「やっぱり?」
「やっぱり。」
「なんだぃ、けちーぃ。」
「けちゆーな。」
「どうせありあまってるんだからくれたっていいのにー」
「・・・」
「ほしいのにぃ。」
「・・・えー、今から、クサいことを承知で話します。けしてつっこまんように。」
「大丈夫です。むしろ、何を今更って感じですから。」
「・・・あと、無邪気に俺をへこますんも禁止。」
「はーい・・・?」
「なんやその疑問形は・・・って、あかんあかん、いちいちツッコミいれとったら話進まへんやん!えーと、本題!あんな、お前は、もう十分勇気もっとう。やから、俺がやらんでもいける。」
「・・・えー?」
「マジで。で、俺ができるんは、その勇気を出すんを手伝うことだけ。そんだけやねん。うん。おけ?」
「・・・あーい、了解っ!」
「ていうか、もらえるんやったら俺が欲しいっ!」
「えー?郡山さんがー?」
「おう。言っとくけどな、一番ヘタレとん俺やで?お前は知らんやろうけど、多分。」
「ホントですか!?じゃあ郡山さんにも好きな人がいるってことですか!?」
「さぁ?」
「あ、ずるい!」
「はっはー。ま、勇気はあげられへんけど、そんかわり、本気でサポートしますよ?お嬢さん。」
「・・・はい、お願いします。」
「おぅ、もう泥舟に乗ったつもりでおり!」
「いや泥舟じゃなくて大船・・・や、案外泥舟であってるかもしれませんね。」
「いやそこはツッコミ欲しかった!!」


浮雲ラプソディー





♯27


“with 郡山”

「最近、ゆーちゃんと少し距離がある気がする。」
「そらお前、1組から5組まで30mくらいあるもんな。」
「違いますー、そうじゃなくて・・・」
「30m、kmに直すと何km?」
「え・・・えとっ・・・」
「ほら、遅いぞー。」
「えと、えと、れっ・・・0.03km!!」
「おー、正解。」
「どうだ!・・・じゃなくてっ!」
「大丈夫やって。俺から見る限りは。」
「へ?」
「俺から見る限り、お前らは仲いいよ。ずっと変わらず。」
「でも・・・」
「じゃあ、何でお前は『距離がある』って思ったん?」
「え、えっと・・・最近あんまり話してないし・・・」
「ちょっとしゃべらんかったくらいで、距離ができるようなもんなんか?お前らは。」
「う・・・」
「そんなん、もしあったとしてもそれはお前が勝手に作ったもんやろが。」
「・・・です。」
「な?・・・大丈夫やて。」

「お、噂をすれば何とやら。おい、下の昇降口んとこに小野おんで。今帰りとちゃう?」
「・・・ありがと郡山さん!!」
「おー。またなー」


浮雲ラプソディー





♯28


“with ゆーちゃん&あっちゃん”

「あ、ゆーちゃんだ!ゆー・・・」
「ゆずかー、一緒に帰ろー!」
「おうよ。」

「あ・・・(えっと、5組の高原さんだっけか。)」

「・・・ま、そういうこともあるやんな。」

「・・・なんだろ。このもやもやした感じは。」

「・・・え、嫉妬?・・・ナイナイナイ。」

「・・・いや、無いって。」

「・・・無い、やんな?」
「何一人でブツブツ言っとん?」
「うは!あっちゃん!?」
「なんかキモいで?」
「う・・・ひどいわぁ。」
「いいから止まっとらんと帰ろーや。」
「うん・・・」


「あ、あれゆーちゃんやん。」
「!!・・・ほんまやー。」
「・・・?みーちゃん?下向いてどないしたん?コンタクト?」
「ううん、何でも・・・」
「・・・おーい、ゆーちゃーん!」
「あ、みーちゃんあっちゃん!」
「(・・・あれ、高原さんおらへん・・・)」
「ゆーちゃん今帰り?一人?」
「んー、さっきまで一緒やった子がおってんけど、途中であの子の彼氏と会って、そのまま二人で帰ってった。」
「うわー、むかつくな。」
「やろ。・・・みーちゃん?」
「え、あ、はい!なんでしょう!」
「いや、どしたん?」
「え、あ、ううん、何でもないよ〜?(ちょっとほっとしたなんて死んでも言えませんよ)」
「あー、みーちゃんさっきから何かおかしいねん。ところでお嬢さん、私らと一緒に帰りませんか?」
「おうよ。」
「!」
「よし、じゃあみんなで帰ろかー。」
「・・・うん!ゆーちゃん置いてかれたんなら私がもらったろ!」
「いや結構。」
「冷たいゆーちゃん!」
「私がもらったろか?」
「あっちゃん!」
「喜んで!」
「ゆーちゃん!?」

「(・・・あっちゃん、私が声かけるのためらっとったんに気付いたんやろか・・・いっつもはあっちゃんより先に私が声かけるから・・・)」

「(まぁなんにせよ、あっちゃんに感謝せななー。)」

「ふっふー、あっちゃん好きよー」
「何、ホンマどしたん今日は。」
「えへへ。ゆーちゃんも大好きよー!」
「おぅ。」
「これはいつもどーりやな。」
「二人とも大好きよー!」
「はいはい」
「わかったて。」
「あははははっ」


浮雲ラプソディー





♯29


もうすぐ、春が来る。


「なんかまた最近寒い日続くなー。」
「ホンマやなー、はよ春にならんかなぁ、寒いん苦手やわ。」
「あはは、私も。」
のんびりと会話するのは、私、神原みこと、通称みーちゃんと、友人の小野ゆずか、通称ゆーちゃんだ。
受験勉強に追われるせいでほとんど会うこともなかったのだが、先程職員室前で久しぶりに会ったので、外に出てだべっているのだ。
教室に郡山さんを放置していることは、今は忘れたことにする。

盛り上がっていた話題が少し落ち着いたところで、ゆーちゃんがふと思い出したように声をあげた。
「あっ、そやそや。そういえば私な・・・」
一呼吸置いて、彼女は言った。
「広島受けてん。」
心臓が大きく脈打った、気がした。
「え・・・?」
「やからな、受かったらあっちで一人暮らしすんねん。」
「え、ちょ、待って?広島?広島って?あの牡蠣の?」
混乱している私を見て、ゆーちゃんは困ったように笑った。
「うん、牡蠣の。受かっとったらの話やけどなー。」
「そんなん、ゆーちゃんやったら絶対受かっとう!」
受かっているであろうからこそ・・・広島行きは、決定しているようなものなのだ。
「そっ・・・かぁ・・・広島行くんかぁ・・・」
「うん。」
「・・・さみしい、なぁ・・・」
「ホンマな。てか心細いわー、一人暮らしとか。」
「あははっ、気ぃつけーよー?」
・・・ゆーちゃんには申し訳ないが、その後の会話の内容はほとんど覚えていない。
笑ったり相槌を打ったりする裏で、ずっと一つのことを考えていた。


『ゆーちゃんが、いなくなる。』




ゆーちゃんと別れてから私は、まっすぐ郡山さんのいる教室には帰らずに、誰もいない、一組の教室に入った。
一人になって、落ち着きたかった。

窓の桟に寄り掛かって大きな溜め息をつく。幸せが逃げる?もう逃げてるから関係ないね。
頭に響く、先程の彼女の言葉。

『広島受けてん。』

『受かったらあっちで一人暮らしすんねん。』


「それやったら、春なんか来んでいいのに。」
そう言ってみても、日めくりカレンダー、長くなってきた日中、その他目に映るものすべてが季節の移り変わりを告げている。

うぐいすなんて鳴かなくていい。
桜も、咲かなくていい。
ずっと、冬のままでいい。


だから、私から大事な人を奪わないでください。



近づいてくる足音に気付いて、慌てて零れていた涙を拭った。
足音は教室の前で止まった。同時にかけられる声。
「あ、おった。帰ってくんの遅いと思ったら・・・教室で何しとったん?」
ごめんなさい郡山さん、今は素で忘れてました。
「・・・センチメンタルガールになっていました。」
「は?」
変な顔。そんな表情が好きな私も、たぶん変。
「ふふっ、変な顔。今の郡山さんの顔――」
「・・・変なんはお前や。」
知ってる。
「なに、何でこんなとこおるん?・・・泣いとん?」
「あはは・・・」
「あははやなくて、どないしたん?どっか痛いん?」
「・・・春が来るから。」
は?と再び首をかしげる郡山さんに、私は声が震えないよう頑張って言った。
「広島、受けたんですって。ゆーちゃん。」
「・・・そうか・・・」
「受かったら、3月中には向こうに引っ越すんですって。」
「・・・そう、か。」
「ゆーちゃんなら、きっと受かってます。」
「そうやな。」
「そして・・・」
広島に、行ってしまうんだ。
「・・・やだ。」
「・・・」
「いやや・・・」
「・・・」
「ずっと、いっしょにおりたいぃ・・・」
「・・・」
「はなれたない・・・」
ぼろぼろと、情けないのはわかってる。わかっているけれども。

郡山さんは、何も言わない。
私も、何も言えない。
ただしゃくりあげる声だけが、教室に響いていた。



もうすぐ、春が来る。


浮雲ラプソディー



いつもと違う書き方。
実はこれ、お題の「は」なんですよ。「はるが来る」です。




♯30


“with ゆーちゃん”

「みーちゃんみーちゃん」
「うん?」
「あんなぁ、ダンディーゆずかとみにゆずか、どっちがいい?」
「・・・?」
「な、どっちがいいと思う?」
「・・・とりあえず、ダンディーて何?」
「ダンディーの意味知らんの?」
「いや、意味はわかるけど意味がわからんっていうか・・・具体的に何よ、ダンディーゆずかって。」
「おっほん。やぁ神原君、元気かね。」
「うわぁ意味わからんけど可愛い!!ていうかおっさんくさい!じゃあみにゆずかは!?」
「昨日服を買いに行ったんだけど気に入ったものはなかったんだ〜。」
「・・・なるほど標準語!みにと標準語のつながりがよくわからんけど新鮮で可愛い!!」
「へっへー、考えたやろ?」
「うん!でもなんでなん?」
「キャラ付けよキャラ付け。」
「キャラ付けかぁ〜・・・」
「そ!な、どっちの方が好き?」
「んー、個人的にはぁ・・・」
「どっちも、とかはあかんで。嬉しいけど。」
「エスパー!?」
「いやん照れるやんか〜」
「あははっ、んー、そやねぇ・・・」

「今のゆーちゃんが一番好き、かな。」


浮雲ラプソディー


一番最後の台詞を言いたかっただけ。
ちなみに最初は、ゆずかの台詞で、「キャラ付けよキャラ付け。」の後「私って浮雲の中で、結構出てる割にはいまいちキャラ立ってないやん?」
と続く予定でした。