「人間界に豆撒きという風習があるのは理解したな?」
「……ああ。」
「だから誰かが鬼になって、そいつに豆をぶつけなければならないということも理解できたな?」
「……ああ。」
「じゃあ問題ないだろ?」
「だからっ!その鬼がなんで問答無用で俺と陣に決定しているのかということを聞いているんだ!!!
派手好きなお前がやればいいだろうが!!」
「あ、ツノがでた。」
「やかましいっ!!」
ようかいだもの。
〜ドキッ☆妖怪だらけの豆まき大会!ポロリもあるよ!〜
死々若「ねーよ。」
皆さんこんにちは、死々若丸です☆通称死々若!この呼び名は、容姿端麗、頭脳明晰、おまけに半端なく強い鈴木って妖怪が、「丸」だけを取るっていうハイセンスな呼び方をしたことから定着したんだ♪あ、鈴木っていうのは俺が世界一尊敬している奴で、麗しき発明王でありずば抜けたリーダーシップでチームをひっぱわっ、ちょっ、待ってその刀しまえって死々若!!俺が何をした!
「何をしただと?まぁそう騙される奴もいないとは思うが、いい加減その俺の名を騙っての不自然かつ不愉快な、虚構に満ちたモノローグを止めろ。さもなくばお前の息の根を止めてやる。」
「だー、ちょっとしたお遊びじゃんか、そんな怒らなくても……」
刀を構えてどす黒いオーラを出す死々若丸と、それをへらへらとした笑顔でかわそうとする鈴木。
そんな二人のやり取りをいつものことだと無視して、他四人はさっさと豆撒きの準備をしていた。
「なーなー、こんなんでいいだかー?」
そう言って顔を上げたのは、風使いの陣。その手元には手書きの鬼の面……と本人は主張するが、どう見ても幼児の落書きにしか思えないものがある。
「陣……一応聞くが、それは何だ?」
「見てわかんだろ?鬼の面だべ!」
わからないから訊いているんだ、と返したいのをぐっと堪えて、呪氷使いの凍矢は鈴駆に声をかける。
「鈴駆、すまんが鬼の絵を描いてもらえるか?」
「えー、オイラあんまり自信ないんだけどなー。酎に描かせてよ。」
その言葉に凍矢は酎と呼ばれた奴をちらりと見る。
「……なら起こしてこい。」
「さっき試みたけど無理だったよ。」
二人の視線の先には、酔い潰れたオヤジ、もとい酎がいびきをかいていた。
こうして四人―実際頑張っているのは二人だが―の準備は、かなり手間取っていた。
そもそも何故この妖怪達が豆撒きの準備なぞをしているのか。
事の発端は、一日前。修行の後に幻海がぽつりと漏らした一言にあった。
「そういや明日は節分だったね。」
「節分……?」
その場の六人が不思議そうな顔をする。
「おや、お前達節分を知らんのかい?」
「ええ、節分とは何ですか?」
凍矢が代表して尋ねる。
「そうだね、簡単に言えば、豆をまいて厄を追い払い、福を招き入れる儀式みたいなもんだね。」
豆、という言葉に素早く反応したのは陣。
「豆!?豆食えるんだか!?」
「お前は食べることしか考えてないのか。」
「豆かー、酒のつまみにはちと物足りねーな。」
「だからツマミにするんじゃなくてまくんだってば。」
「俺も何かボケた方がいいか?」
「貴様は既に存在自体がボケになっているから余計なことはするな。」
「ひどっ!」
そんな6人の様子を面白そうに眺めていた幻海だったが、ふと思い付いて口を開いた。
「あたしは明日ちょっと用があって出掛けるから、修行は休みにして……お前たち、やってみるかい?」
何を?
節分を。
というわけで、六人の六人による六人の為の豆撒き大会が開催されることになった。
――はずだったのだが……
「だーーっっ!!もうやってられっかぁぁ!ちまちました作業なんかつまんねーべ!!」
「あああああ!!オイラが作った面がぁぁ!!」
いつの間にか、喜劇は惨劇に変わっていた。
「うるさい貴様ら!!静かにせんとたたっ斬るぞ!!」
「うっさいそっちこそ少しは協調性見せるべ怠け者!!」
「なっ!誰がぐうたらで協調性の欠片もない怠け者だと!?」
「そこまで言ってないし何よりお前自覚してるんだったら直せよ。」
「ははははは皆楽しそうだなぁ」
「ちょ!それ何!?何で俺の力作がそんな無駄にカラフルになってるべや!?」
「俺なりにアレンジしてみた。」
「それアレンジじゃねぇ!ただの嫌がらせだべ!!」
「なんだ、折角美しくしてやったのに。」
「いらねーよ!ありがた迷惑だべ!ていうかただの迷惑!!」
「そう叫ぶなり陣が怒りに任せて風をおこせば、飛ばされたクレヨンが鈴駆の口に入り、それでついにキレた鈴駆がヨーヨーを投げ付けるがそれは風によって軌道を変えられ寝ていた酎にクリーンヒット。飛び起きた酎の渾身の一撃はすぐ近くにいた鈴木に向けられ、どさくさにまぎれて苛々していた死々若丸も鈴木に渾身の一撃。当然怒った鈴木はなんかようわからん派手で無駄にカラフルな技を繰り出すが、それを見た陣が先程の恨みを思い出し更に風を強くして――」
ここで実況に疲れた凍矢はマイクを放り投げ頭を振る。ちなみに彼は、鈴木が陣の鬼?の絵に色を付け出した辺りから、やってくるであろう嵐を感知し、素早く避難していた。
勿論、彼はこの惨劇を止める気など全く無い。
誰が好き好んで死亡フラグを立てるだろうか。折角の休みなのだから無駄に体力は使わず、明日からの修行に備えたい。
それは彼の切なる願いだった。
そして彼はそのささやかな願いを叶えるべく、
「……豆でも凍らせてみるか……」
何故か豆を一粒ずつ凍らせるという、現実逃避と呼ぶにはあまりにも方向性を間違えた作業に取り掛かった。
哀しきかな、ツッコミ役はどこにもいないのであった。
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「ただい……」
帰ってきた幻海が見たのは、散乱する豆に破れたカラフルな鬼の絵、そして……
休みと言ったはずなのに、いつものように、いやむしろいつも以上に気合いの入った戦いを繰り広げている弟子たちだった。
「……やってるかと思って来てみたら、なんだいこれは……」
呆れた幻海の問いに、5人を遠くから見守って、もとい見物していた凍矢は、手元の氷漬けの豆を見ながら溜め息をついて言った。
「……妖怪ですから。」

某六人衆サイト管理人のレイ様に押し付けた献上した小話です。
書いたのが六月なのに献上したのが次の年の一月なのは……計画性のない私がこんな季節物を書いたせいです。夏に節分ネタはないですよね……。色々スミマセン。