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耕太はすばやくやよいに近付くと、がばっと抱き押さえた。 「っ!?ちょっ、コ、コータ!?」 「死神さん!?」 状況を判断できず暴れるやよいを押さえこみ、耕太は同じく状況を理解できていない麻衣に叫んだ。 「行ってこい麻衣ちゃん!未練ないっつったって、後で絶対悔やむぞ!お前が満足できるんなら、そんな哀しい 顔しなくなるんなら、行ってこい!こいつはオレが止めてるから!」 「むがっ・・・ちょっ、これ上司にすること!?せーくーはーらー!」 「・・・ありがとう死神さん、やよいさん!」 「ちょっ、あー・・・」 麻衣が家の中に入っていったのを見届けると、やよいは諦めたように抵抗を止め、肩をすくめて耕太に言った。 「・・・なかなかやるじゃない?」 「え?」 「上司や規則より、魂をまず優先する。正解とは言えないけど、ま、悪くはないわね。」 「・・・はぁ。」 「何よ、ほうけた顔して。そんなことより、麻衣ちゃんもう行っちゃったんだから、そろそろ放してくれない? もう暴れないから安心してよ。それとも、ずっとこうしていたいの?このエロスマン〜」 首だけ振り向いてにやりと笑うやよいに、一瞬怪訝な顔をした耕太だったが、すぐに今の状態を思い出した。 「え、あ、わりぃっ!つい・・・その、どうしてもあいつを行かせてやりたくて、その・・・」 「分かってる。」 照れと恥ずかしさを隠すように、耕太はふとした疑問をぶつけてみた。 「にしても、何で生きてる人間に話しかけちゃいけないなんて規則があるんすかね。」 「ないよ、そんなの。」 けろりと言うやよいを、耕太は思わず凝視した。 「へっ?」 「あんたを試してみただけ。あんたが魂を優先するか、規則を優先するか。まぁ、なんとなく予想はついてたけど。」 「んなっ・・・」 「わざわざ来てやったんだから、そんくらい(のいたずらは)いいでしょ。でもまさか抱きついてくるとは思わなかったけどねー♪」 「そっ、それは・・・なんてゆーか、ノリてか、えっと・・・」 赤くなった耕太を見てけらけらと笑うやよいだったが、ふと、まじめな顔になった。 「・・・でも、真面目な話、やっぱあんた、素質あるかもよ。」 「マジ!?」 「ええ。・・・ま、口のきき方は直すべきだけど。」 「・・・はい、すんません。」 「それだけ?」 いじわるく問うやよいに、耕太はぐっとつまりながらも、しぶしぶ、 「・・・これからは気をつけマス。」 「よろしい。」 くすりと、どちらからともなく小さく笑った。 ふわり 麻衣は静かに(と言っても音がたつわけないのだが)ベランダに降り立った。 そっと部屋の中を覗き込むと、まだ、二人はそこにいる。 麻衣は少しだけ迷って、 「ファイト、私。」 小さく呟いて、窓ガラスをすりぬけ、部屋に入った。 パチンという音と共に、突然部屋の電気が消えた。 ハッと顔を上げ、周りを見回す両親。 停電でないことは、外からの明かりで分かる。 不安げに電気のスイッチのところに目を向けた母親は、息を呑んで、ぐっと夫の袖を掴んだ。 訝しげに、父親もそこに目を向ける。 そこには、 「おとーさん・・・おかーさん・・・」 「「麻衣っ!!」」 そっと笑う、麻衣がいた。 「麻衣っ、なんでここにっ・・・」 「麻衣!麻衣っ!」 麻衣が帰ってきたように、堪えきれずに駆け寄ろうとする両親。そんな両親に麻衣は戸惑った。しかし、 「ごめんね、突然電気消して。・・・でも、私・・・」 麻衣はほんの少し、言葉に詰まって、 「電気消さないと、はっきり見えないから。」 その言葉に、両親は一瞬言葉を失った。 ――そうだ、麻衣はもう・・・ その沈黙が、麻衣にはひたすら恐ろしかった。 『霊』である自分が拒否されるかもしれないと思った。 (だから、早く言いたかったことを言わなくちゃ。) 「だから驚かせちゃって、ホントごめん。でもね、私、どうしてもいいたいことがあって・・・。」 「麻衣。」 「ごめんね、ホント親不孝だよね私。昔から言われてることなのにね・・・」 「麻衣っ、」 「こんな姿でしか会えなくてごめん、ホントにごめ・・・」 「麻衣っ!!」 何かが外れたように話し続ける麻衣に、母親が叫んだ。 ビクッと、麻衣が固まる。 「そんな、謝らないで・・・。麻衣が悪いんじゃないもの、そんなに自分を責めないで・・・。」 「おかーさん・・・」 「むしろ、わざわざ会いに来てくれてありがとう、麻衣。」 「おかあさん・・・」 「・・・謝るのは父さんたちだよ。・・・父さんたちがいつまでも暗かったから、成仏できなかったんじゃないのか?」 「そんなことっ・・・あるけど、でも、それだけじゃない!言いたいことがあって・・・」 そこまで言って、麻衣は口をつぐんだ。 心なしか、顔が赤くなっているように見える。 それを隠すように、下を向いた麻衣に、 「麻衣?」 心配そうに母親が声をかける。 (言う機会は今しかないんだから、恥ずかしがるな、自分っ!) 「あ・・・あのねっ、私、・・・今まで、いっぱい反抗してきたし、口答えとかも多かったけど、でもっ・・・私、 お父さんもお母さんも、大好きだからっ!」 「「麻衣・・・」」 「だから、・・・だからっ、私のこと・・・忘れないで。」 そこまで言って顔を上げると―― 両親は、泣いていた。 (あ・・・) 目が熱くなる。 ――泣くな、自分。 ――泣かないと決めた。泣くな。笑え。 そう自分に言い聞かせて、必死に涙を堪える。 「やっ・・・やだな〜、もう。しっかりしてよ、折角のいい男が台無しじゃん。」 「・・・いつもオヤジくさいと馬鹿にしてたのは誰だ。」 「あはははっ、そうだっけ〜?」 「忘れるわけないわ。」 笑いあう父親と麻衣の間に、涙まじりの、しかしハッキリとした声が響いた。 「世界中探しても、あなたみたいな娘はいないもの。」 「あ・・・」 優しい微笑が、麻衣を包む。 「あったりまえでしょ!こんないい娘、世界中探したっていないんだからっ!」 その言葉に、プッと両親がふきだし、麻衣も思わず笑ってしまった。 もう二度と聞くことのない、三人揃った笑い声が、それぞれの胸の中に積もりゆく。 それを感じながら、麻衣はあの二人を思い出した。 「・・・じゃあ、もう、行くね。」 「もう?」 「うん、死神さんたちが待ってるから。」 死神、と言う単語に顔を見合わせた両親に、麻衣は慌ててフォローを入れた。 「あっ、いやっ、死神って言っても、私たちが思ってるようなのじゃなくて、すっごくいい人たちなの!私が ここにこれたのも、その人たちのおかげだし!」 「・・・なら、ちゃんとお礼言うんだぞ。」 父親の柔らかな言い方が、とても嬉しくて、 「わかってるっ!じゃあね、ばいばい!」 またしても零れそうになった涙に気付かれないように、ベランダに走った。 大きく息を吸い、少し曲げた足をくっと伸ばす。 スッと滑らかに、麻衣は飛んだ。 ――振り返ってはいけない。 ――振り返っては、いけないのだ。 「さよなら、お母さん、お父さん・・・」 「「さよなら、麻衣・・・」」 「あ、麻衣ちゃん。」 「終わったみたいね。」 ふわふわと、麻衣が飛んできた。 俯いているせいで、表情はわからないが、おそらく、いや、絶対に・・・ 「・・・やっぱ泣いてるみたいっスね」 「ん。でも、後悔とかはないみたいよ。まっすぐ、こっちにきてるもの。」 「・・・ッスね。」 「・・・死神さん、やよいさんっ・・・!」 ぼふっ 「うわっ・・・」 二人の元に飛んできた麻衣は、そのままの勢いで耕太にとびついた。 耕太の服をつかみ激しく泣きじゃくる麻衣。その頭を、優しく撫でるやよい。 二人とも何も言わず、ただ麻衣を包みこむようにして、麻衣が泣きやむのを待った。 その間やよいは、耕太の目の端に少し溜まっていた水滴を見なかったことにした。 「言いたいこと、言えた?」 「はい」 「ちゃんと、笑った?」 「・・・はいっ」 「ん、いい感じね。」 そういって、やよいは麻衣の背中を叩いた。 (やっぱベテランなだけあるなぁ・・・) やよいを横目で見ながら、耕太はふと思った。 「――さて、この仕事はもうすぐ終わりそうだけど、どう?」 「何が?」 「これで3人目だけど、死神の仕事。これからも続けていける?」 「・・・ああ。多分な。」 「それじゃ・・・これからも一緒に歌ってこうか。」 ―――終わらないウタを。 あとがきと言う名の反省会 最後終わり方が何か微妙・・・ あー・・・未乃タイキ様、ごめんなさいorz 私の中では、やよいさん=演技派 耕太=そんなやよいさんにいつも振り回される みたいな感じです。 |