「源さん。」
「また来たのかい?ちろ。」
「うん。」
白クマ死神、源さんのいる東海支社。
黒にまみれたみんなで目が疲れたら、わたしはいつもここに来る。
そんなわたしを、源さんはいつだって嫌な顔一つせずに迎えてくれる。
源さんとちろ
「僕も今帰ってきたばっかりなんだよぉ。ちろも仕事終ったのかい?」
「うん。営業部のお手伝いで7日間、一緒に過ごして送ってきた。」
「そっかぁ、おつかれさまぁ。」
「うん、源さんも・・・」
そこで初めて、わたしは源さんの手に気づいた。
真っ白な手が、茶色くなっている。
泥だらけの、手。
「また、つくったの?」
「そうだよぉ。」
源さんは、たまにお墓を作る。身内の居ない魂のために、小さなお墓を。
やさしいこの人(白クマ)は、どうしても放っておけないらしい。
ふいに、私はその手に飛びつきたくなった。実行した。
「あー、きたないよぉ。」
「・・・きれいだよ。ちろは好き。」
わたしがそう言うと、ちろは変わってるねぇ、と源さんは笑った。
わたしも笑って、ますますぎゅっと源さんの手を握る。
「・・・ざらざらとぷにぷにとふわふわだー。」
「肉球はらめぇー。」
源さんの手を堪能したわたしは、今度は頭に顔をうずめたくなった。
「もふもふしていーい?」
「んー、ネーゼくんが帰ってくるまでだよぉ。見つかったらさぼっちゃダメって怒られちゃうからねぇ。」
「うん、わかった。」
源さんも慣れてるから、私がやりやすいようにヘルメットを外して椅子に座ってくれる。
私も椅子の肘に座って、もたれるように頭に顔をうずめた。
「もふもふだー。あったかいねぇ。」
「そうかい?」
うん、と頷いて更に深く顔をうずめる。
「んー・・・」
「ねむいのかい?」
「うん・・・」
「そっかぁ、じゃあみなみさんに連絡しておくからねぇ」
「んぅ・・・」
ふわふわで、温かい。そしてまっしろ。
どこかで同じようなものを見たような気がしてたけど、今わかった。
今日も作った、あの扉だ。
わたしはあの中に入ったことはないけれど、もし、入ったとしたら、
きっと、こんな感じなんだろうな。
(ふわふわで、あったかくて、やさしい。)
(源さんみたいな死神に、わたしも、なれたらいいな。)
終
後書き
ちろは心の中の一人称は「わたし」ですが、口に出す一人称は「ちろ」なのです。
「ちろ」という死神になってからの愛称を口に出すことで、「自分は死神なんだ」と自分自身に言い聞かせているようです。
ちなみに「みなみさん」は上司373号のことです。
あと源さんもふりたい
偽与野祭り09提出