『いつかまた』





「ねえキノ。」
「なんだい、エルメス。」
「十年後の今頃さぁ、キノは一体何してるのかなぁ。」
「突然だね。・・・うーん・・・一人で旅を続けているかもしれないし、どこかに住み着いてのんびり午後を過ごしているかもしれない。甘いものをお腹いっぱい食べてるかもしれないし、エルメスに乗って飛ばしてるかもしれない。本を読んで妄想を膨らまして、それを文章にしようとして悩んでいるかも。もしくは時雨沢のとこにいってあとがきについて話してるかもしれないな。買い物したりとかもありうるし。・・・・・もしかしたらエルメスの乗り手、変わってるかもしれないね。」
「それって、キノはこの世にいないってこと?」
「さあ。それとか、また、師匠に会うか捕まるかして、こっぴどくしかられて、また修行兼家事手伝いしてるかもね。」
「ふーん。」
エルメスがたいして面白くもなさそうに相槌を打つ。それに苦笑しながら、キノは遠くを見るような目でボソッと言った。
「あるいは・・・・・。」
「あるいは?」


「・・・ま、とにかく今は分からないよ。未来なんて・・・。」
「あーー!!ごまかしたな!」
「そんなことより、もう寝るよ。」
「ずるいよ!キノ!」
「おやすみ、エルメス。」
キノは火を消した。辺りは暗闇に包まれた。その中でエルメスのわめく声が響く。
「気になるじゃん!!キーノー!キノってば!!」
「・・・あーもう分かったよ。あるいは・・・。」
「あるいは?」
「二人で旅をしているかもしれないなって。」
「・・・具体的には二人と二台と一匹で、ってこと?」
「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。ただ・・・。」
「ただ?」
「ボクはそれがいいなって思う。」
「ふーん。」
「じゃあ、ほんとに寝るよ、エルメス。」
「うん、おやすみ、キノ。」
「おやすみ、エルメス。・・・おやすみ・・・。」
「え?最後なんて?」
エルメスが聞き返したが、キノは答えずに、そのまま寝袋に入り、そっと目を閉じた。

そして想う。遠く離れた、同じ空の下にいる彼のことを。
「いつかまた会えたら・・・」、それを考えながら、キノはいつしか眠っていた。



「ん?」
「どうかなさいましたか、シズ様?」
「あ、いや、なんでもない。」
「そうですか。おやすみなさいませ、シズ様。」
「ああ、おやすみ。陸。ティーも。」
「・・・・・・」


(おやすみ、と聞こえた気がしたんだが・・・。彼女の声で。・・・疲れているのだろうか?)
小さな疑問を残しつつ、仰向けになって、そっと空を見上げた。

そして想う。遠く離れた、同じ空の下にいる彼女のことを。
「いつかまた会えれば・・・」、それを考えながら、シズはやがて眠りについた。