野球から離れて約二年、高校を卒業して一年とちょっと。

俺はあと数時間で、20になる。









三年越しの「before that day」












高校を卒業すると同時に、俺は九州の実家に戻り、家業である農業をすることになった。
この一年の間に、野球部のメンツで集まることは何度かあったようなのだが、俺は一度も行ってない。
福岡から埼玉まで、気軽に行ける距離ではない。
よって俺は、この一年とちょっとの間一度も、高校の同級生と会うことはなかったのだ。

親友だった、あいつとも。





・・・さて。
俺は今、玄関の前に立ち尽くして、このちょっとしたモノローグを展開しているわけで。

その中で確か、『福岡から埼玉まで、気軽に行ける距離ではない。』というフレーズを使ったと思う。

・・・にもかかわらず、だ。


「猪里ぃ、早く家に入れてくれYo〜!」

ああ、なんか前にもこんなことがあった気がする。

「・・・なしてお前がここにおると?」
「会いたかったZe猪里!」
「ごまかすな!!」

てへ言うなポーズを付けるな気持ち悪いんじゃ。
聞きたいことは山程ある。何から聞けばいいんだろう、とりあえずその荷物の量はなんなんだ。あれか、そのままここに住むつもりか。

「やだNa、3日くらいだっTe!」
「人の心読むな!」
「タケ!お客様にそげん言葉遣い!ちゃんとしぃ!」
母さんが中から声をかけてくるが、正直・・・
「ばってんこいつはお客ってもんやなか!」
「そーっすYo、お客だなんて水臭い!もっとフレンドリーにお願いしまSu!」
「そーゆー意味やないっ!」
「なんだよ猪里!遠くから来たのNi!」
「ばってん、人の許可とらんと押しかけるとか、もし留守やったりしたら・・・」
「でもおばさんの許可はとったんだZe?」
「はぁ!?」
「猪里には内緒にしてくださいって言ったけどNa!」
「おまっ・・・そんっ・・・」
(・・・いかん、奴のペースに巻き込まれとるばい!)
気付いた俺はとりあえず深呼吸して、ようやく本題に移ることにした。
「大体なんで突然来たと?つか学校はどげんしたとね・・・?」
「Nー、明日で二十歳になんだRo?だから直接祝いたいNaーって思っTe。今日は昼までだったから、授業終わってソッコー来た!」
「・・・え?」

わざわざ俺の誕生日祝いに、埼玉から、福岡まで?
・・・どうしよう、すごく、嬉しい。



「・・・じゃなくて!」
「え!?」
いけない、また流されるとこだった。
でも、嬉しい気持ちは押さえようがなくて、あー、どうしよう。


・・・もう・・・流されてもいいかなぁ・・・


「猪里が百面相してる!」
「しとらん!」
「えー?してるっTe!」
「もうこっち見んな!」
言い放つと同時に顔を下に向けると、案の定、
「えっと、猪里?」
不安そうな声が頭の上から振ってきて、俺の心をぐらぐら揺らす。



・・・そろそろ、素直になろうか。



そうして俺は、ようやく腹を括ることにした。

「・・・お前、来たからには猪里家に合わせろよ?」
「えっ、あ、はい!」
「朝は五時起床、夜は十時就寝な。」
「早っ!?」
「・・・でも特別に、今日だけ、0時ちょっと過ぎまで起きとっても、よかよ。」
ああ、俺の顔、きっと今、真っ赤だ。
「え、ホントに?・・・すっげぇ今更だけど、迷惑とかじゃ、ない?」
「そんな、ほんなこつ今更なこと・・・三年間ずっと一緒におったんやけ、わかれ!・・・嬉しくないわけ、なかろーもん・・・!!」
ようやく顔を上げ叫ぶように言えば、虎鉄は目を見開いて、かと思ったら全開の笑顔になった。
「よかったー!!わざわざ来た甲斐があったNa!」
俺に素っ気無い態度をとられたのを忘れてしまったかのように無邪気にはしゃぐ親友に、ちょっと罪悪感。
きっと虎鉄はこれっぽっちも気にしてないのだろうけど、かといって何も言わないのは俺が嫌だ。
だから俺は、虎鉄、と呼び掛ける。

こいつが許してくれるとしたら、必要な言葉はきっと、ごめんなじゃなくて、


「ありがと虎鉄・・・ちかっぱ嬉しかぁ。」


心からの、ありがとう。



「・・・どういたしまして。」


返された声は、やはりどこまでもやさしかった。






.
.
.
「そういや虎鉄、背ぇちょっと伸びたんやなか?」
「あ、わかる?実は1cm伸びたんDa!俺ってばまだまだ成長期☆」
「あーはいはい。」
「次に会った時も、また伸びてるかもNa!」
「まぁ、最長で8か月あるけんね。」
「そうそう、8・・・え?なんで?」
「お前は何月に生まれたとね?」
「え、・・・A!うっそ、マジDe!?」
「迷惑?」
「ぜんっぜん!!」
ぶんぶんと首を振る虎鉄。うわー嬉しいなー楽しみだなーなんてはしゃいでいる様子は高校時代となんら変わってなくて、不覚にも、ちょっとだけ泣きそうになってしまった。




なぁ虎鉄。今度は俺が、君に、会いに行くよ。


その時は、今日俺がそうであったように、心から嬉しく思ってくれたら、いいな。














(おわり。)
















「あかん、めっちゃ荒い・・・(文章が)。でも時間ない!」
と唸りながら書き上げましたがいつもと変わりませんかそうですかそうですね。
とにかく間に合ってよかたですー
ちなみに「3日くらい」というのは、金の夜着いて、土曜が誕生日、で日曜遊んで月曜は授業ないので月曜夕方に帰るという、勝手な設定です。
虎鉄は猪里家に事前に電話した際に、猪里の許可はとってませんが猪里母の許可はちゃっかりとりました。
ついでに家までの道のりも教えてもらいました。